鋭い切れ味の解説とプレーの言語化能力はサッカー解説者の中でも随一
スター

サッカー界にはスターが存在する。
突出した存在。そのプレーを見ただけで明らかに他とは異質だ。と感じさせられる。
クリスティアーノロナウドしかり、リオネルメッシしかり。
日本でいえば、小野伸二や香川真司。最近では久保建英という超新星もそうだろうか。
そういった選手を映像などで見た時に、目に見えたままの現象として「すごいなぁ」と感じることはままあるが、“なぜ”そう感じたのかまで考えることはあまりない。
だからこそ、その“なぜ”を突き詰め、言語化し、視聴者に提供してくれる人たちがいる。
そう、解説者だ。
いぶし銀

フィールドプレイヤーにこそ目をむけども、解説者に目をむける機会はあまりないのではないだろうか?
確かに、主役であるプレイヤーと比べれば解説は脇役としてみなされ、クローズアップされることは少ない。
しかし、解説者がいるからこそすんなりと試合のポイントがわかるし、あるいは新しい観点から、プレーのおもしろさを再発見することが出来る。
まさに縁の下の力持ち的な存在。それがサッカー解説者だといえる。
そんな解説者の中で、最近注目を集める人がいる。
それが戸田和幸さん。
まさにいぶし銀、といえる名解説者である。
戸田和幸さんってどんな人?という方向けに。真摯な姿勢が伝わってくるはず。
赤髪の風雲児
ここで少し話は遡る。
令和の時代から平成に。
2000年代。茶髪の風雲児として、橋下徹さんが日曜の夜を楽しませていた頃。
…よりも、少し昔。
赤髪の風雲児が日韓ワールドカップでギラリと輝いていた。
戸田和幸、その人である。
2002年W杯で全試合にフル出場。
デュエルの強さに定評がある守備的MFで、ひとたび試合に出れば、激しい闘志を感じさせるプレーでボールを刈り取った。
厳しいプレッシングに当時のメディアは“つぶし屋”と騒いだが、サッカーはそれだけで成立する簡単なスポーツではない。
点で見れば、“つぶす”というところしか見えないが、その局面を作るためにクレバーに頭を使い、空間を奪う。
体を激しく動かし情熱的なプレーをしつつも、頭は冷静に。
さながらピッチ上で体を駒にチェスをするように、W杯という大舞台で頭脳的に、そして見事にボールを奪取していた。
そんな戸田選手の活躍もあり、当時日本は史上初のベスト16に進出。
日本中が歓喜の渦に包まれていたのを今も思い出せる方は少なくないだろう。
そして戸田選手はW杯の活躍が見事に認められ、日本中の歓喜の熱に押されるように、海外へ羽ばたくことになる。
移籍、そして。
移籍先はトッテナム・ホットスパー。(1882年に創立した名門クラブ。今はプレミアリーグのビッグ6に数えられる強豪)
2002-2003シーズン途中からの加入だったが、4試合に出場。
と、ここまでは順調だった。
しかし、その後の2003-2004シーズンはプレシーズンのけがの影響や、チームの不振によるグレン・ホドル監督の途中解任など、戸田選手に対しての逆風が強く吹き、試合に出ること叶わなかった。
そしてそのまま、イングランドを去ることになる。
終わりなき旅

その後、オランダや韓国、日本でサッカー選手として活躍。
2013年に現役を引退するまで、18年の間サッカー界で活躍した。
引退当時の記事を見つけたので、コメントを下に引用させていただく。
「今後の人生何をしていくか、まだ何も決めれていません。時間が必要だと思います。新しい世界に入っていく新人として正しい心構えを持ちいろいろ勉強しながら少しずつ進んでいこうと思います
出典:2002年W杯戦士・戸田和幸が現役引退を発表…18年間のキャリアに幕
18年間没頭してきたことに終止符を打つ。というのは果たしてどのような心境だろうか。
私などには到底推し量ることのできない苦悩があっての決断だったのだろう。
そして、人生は続いていく。
解説者、戸田和幸へ。
Passion
筆者が解説者としての戸田さんを認知し始めたのは2017年頃だ。
最初解説を聞いたとき、言葉の切れ味にとても驚いた。
その言葉一つ一つが丁寧で論理的であることは勿論ながら、ただ漫然と状況説明をするのではなく、その状況が引き起こされた原因まで含めて解説する。
しかも難しい用語を使わず、かみ砕いた分かりやすい言葉でサッカーの奥深さを伝えるのだからなおのことビックリした。
普段テレビで聞くサッカー解説とは明らかに違ったのだ。
なによりも戸田さんの解説が素晴らしいなと思うのは、サッカーが好きだと伝わってくるところだ。論理的な言葉のその下にサッカーに対する強い情熱をビシバシと感じるのだ。
だからこそ視聴者の胸を打つ解説になるし、サッカーという競技をひと際輝いて見せてくれるのだと思う。
旅の恥はかき捨て
このページを書くに当たって、面白いインタビューを見つけた。
「恥はかき捨て」って自分で勝手に決めた哲学があるんですけど、行ってみて「お前だめだったじゃん」と言われたとしても行ったほうがいい。だって行かなきゃわからないことたくさんある。そう思って生きてきましたから。……中略……僕は色んな意味でリスクを冒しまくって生きてきましたけど、それでよかったと思います。それを活かすのはこれからですね。
出典:<インタビュー前編>元日本代表・戸田和幸氏「色んな意味でリスクを冒しまくって生きてきました」
短い文からも、真摯な人柄がにじみ出ているなと感じる。
そしてサッカープレイヤーとしての経験は、間違いなく解説者、戸田和幸の今に活かされている。
少なくとも私は、戸田さんのおかげでサッカーをとっても楽しませてもらっています。
余談
戸田さんは日本サッカー協会の公認S級コーチ資格も既に取得済み。
近い将来、解説者から監督に転向し、ゆくゆくは日本を率いる…かも?
そんな未来があるかもしれないと考えるだけで、ワクワクしますね。
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